PCRに替わる画期的な核酸同定法
様々な病気の診断、病原体の検出や生物種の特定などにPCR法やDNAシークエンス法が広く用いられています。しかし、これらの技術は高度な機器を保有する検査室と、知識と技術を有する人員がいて初めて可能になるものであり、これらを最も必要としている途上国や、野外、あるいはクリニックなどの現場レベルで実施することはできませんでした。
私達が新たに開発したCRADAR-i法は、どこでも誰でも簡単な操作で様々な核酸を短時間に検出同定出来る革新的な方法です。キットは低コストで、室温で長期保存が可能であり、特別な装置を一切必要とせず直感的に操作可能で、1時間以内に結果が可視化されます。
新型コロナウイルスのような新興感染症の際に、ウイルス抗原を検出するための抗体を作成するには数ヶ月から1年以上の時間がかかりますが、CRADAR-i法はウイルスのゲノム情報がわかった段階で短期間で検査法を提供可能です。医療だけでなく、生物学全般や農林水産業や食品業界における簡易核酸同定法としても広く使用可能です。その際に、複数の病原体や生物種を1つのキットで同時に検出するmultiplex法にも対応しているために、コストや時間を削減することが可能です。
1983年にPCR法が開発されてから40年。この方法が広く普及することによって、核酸の検出法の新たな時代の幕開けとなり、多くの分野に変革をもたらすことでしょう。