
早期確定診断の重要性
例としてデングウイルスを原因とするデング熱の場合、症状は発熱、頭痛、筋肉痛、皮膚の発疹などで風邪症状との区別がつきにくく、明確にデング熱に感染した自覚症状はありません。潜伏期は通常4~7日間で長いと2週間後の発症もあります。感染はネッタイシマカやヒトスジシマカなど蚊を媒介して行われ、くしゃみなどの飛沫からの感染はありません。その為、デングウイルスのキャリアであることさえわかっていれば、蚊を遮断した空間をつくれば感染の増加を防ぐことが出来ます。
また、らい菌を原因とするハンセン病の場合、初期症状は白斑、紅斑など皮膚の発疹ですが、痛みやかゆみを伴わないため放置されることも多いです。ねずみなどの動物や飛沫などによるヒトーヒト感染をします。潜伏期間は平均して5年あり、短くて1年、長いと20年で発症するケースもある慢性疾患です。治療はリファンピシンなどの抗菌薬の投与で行われます。放置すると、皮膚、末梢神経、気道粘膜、眼を侵し障害となるため、なるべく早期での感染診断が重要です。
これら感染症の殆どは、感染の疑いがある初期に精度の高い検査を実施すれば、十分に治療も感染拡大防止も可能です。しかし、実態としては、主要発生国では感染源の特定検査を行うよりも症状からの診断で対症療法が行われることが多く、実際に何に感染しているかの同定が行われないことが多い状態です。この原因のひとつは、ウイルスの確定にはRNAの同定検査という設備的にも費用的にも難易度の高い検査が必用であることと、対応する医療施設数の不十分さにあります。
これらの環境・設備・経済的側面から十分な検査が行うことを難しくしており、それらの課題を解決する方法が望まれています。

使い捨て迅速核酸診断法
解決方法として、私たちは「だれでも」「どこでも」「いつでも」「簡単に」「低コストで」出来、PCRと同レベルな高精度診断が出来る方法を考えました。特に精度が高い確定診断検査には、何に感染しているかを知る必要があります。最も高い精度は、DNAやRNAなどの遺伝子情報を読取り識別する方法です。
これら全ての条件を満たす方法として研究開発しているのが使い捨ての迅速核酸診断キット”CRADAR-i(クレーダーアイ)”です。クレーダーアイは、唾液・ぬぐい液・血液などの検査検体を微量投入後・核酸の増幅から読取り結果の表示まで60分以内に行う、使い捨ての小さな手のひら検査キットです。操作方法が非常に簡単であり低コストなため、医療施設のない地域、閉鎖的環境であっても誰でも手軽に感染の確定検査を行うことが出来ます。このキットを一日でも早く世界に提供できるように、チームでの研究開発が続いています。